亮ちゃーん、と少し先で手を振るのは、内か大倉。声から判断するにたぶん内。軽く手を挙げてそれに応える。
「おはよ亮ちゃん!」
「おう」
大股で歩くそいつはずんずんと俺に近づいてきて・・・あ、やっぱ内や・・・へらっと笑う。
ぼやけた視界の中、ほぼ5m先の人影が内であるとどうにか判別がついたのはその声のおかげと言っても過言やない。あとの判断基準である体格では内かそれとも大倉かなんて、両者にタッパがある分判断しづらい。タッパで言えば横山くんも紛らわしいっちゃ紛らわしいけど、横山くんは俺のことを「亮ちゃん」なんて呼ばへんし。


「・・・お前、」
「ん?」
「ほんまやかましいな朝から」
「は?なんやの朝から!」
「うっさい」
うっさくないですーと言って内は俺の隣に並んで歩き出した。つまり今来た道を逆戻りしてるってことに気付いとんのかな、この子。ええのか?俺には関係ないから特に何も言わんどくけど。




「つーかさ、亮ちゃん俺のこと見えてないやろ?」




「は?」


「めーっちゃ目ぇ細めてこっち見んねんもん。完全ヤンキーの目つき!怖いで?」
「ほっとけ」
目を細めてるのはきっと無意識で、今内に言われて初めて気付いたぐらいやし。
朝の廊下を行き来する、同じ制服の生徒たち。顔の判断がつかんのは単に記憶力が悪いだけやなくて、目が認識しやんから。とは言っても俺に声かける奴なんて限られとるわけやから、何の不都合もない。ヤンキーとか思われんのはそんなに心地よくはなくても、そう勘違いされたところで困るような相手もいない。


「視力いくつやった?こないだ検査したやん」
「0.2」
「0.2で裸眼?あぶな!」
「平気やろ」
「不便ないん?眼鏡買ったらええのに、それかコンタクト」
「・・・いらんわそんなん」
「なんで?」








なんで?




なんでって、








「・・・・・・お前の鬱陶しい顔、そんなはっきり見えてもな」
「・・・いーまーのーはーひどーい!ひどいわ亮ちゃん!ほんまに!今のは!」
「冗談やんけ泣ーくーな」
「泣いてへんし!いや、冗談でも俺今傷ついたもん、もーあかんわ」
内がぎゃんぎゃん喚く。ほんまうっさい。




「博貴うるさい」




後ろから、声。
内はバッと振り返って「あ、ーーーー!!」と叫んでからに駆け寄る。


「おはよ博貴」
「聞いてーやー亮ちゃんがひどいねん!博貴のこといじめてくんねん!」
そう訴えながら抱きつく内をそのままほっといて、は「おはよ亮ちゃん」と言う。ちょっと笑った、か?ぼやけて見えへん。とりあえず「おう」と答えて。


「ちょっとーー!聞いとんの?彼氏がいじめられてんで?どーすんのこういうとき彼女は!」
「よしよしよし」
内の頭を撫でる。それくらいは見える。内はでれっと笑う。これは想像。


・・・それで、十分。





俺は「先教室行っとくわ」と二人に背を向けて歩き出す。
「あ、亮ちゃん、ほんまに眼鏡買いやー!むしろ一緒行こうや眼鏡屋さん!俺が似合いそうなん選んだる!」と追いかけてくる内の声に、「そのうちな」と返す。振り返らんまま。振り返ったって見えへんし。



そう、見えへんねん。





たぶん内の言葉が実現することは、しばらくない。


なんでかわかるか?内、
わからんやろな。わからんどいたらええ。




























お前と、が、二人で笑ってる所なんて絶対見たないねん、マジで。




























0.2に縋る

















(誰や今笑ったの)


















(03/30 相互記念にsora様へ捧ぐSS第二弾です。内夢の気配もぷんぷんするけど錦戸くん夢のつもりです。 )