ドアを開けると、見知った顔がふたつ。
亮とヒロだった。
亮は右隣の家、ヒロは左隣の家に住んでいる、いわゆる幼馴染。あと一人の幼馴染のともはお向かいさんに住んでいる。
・・・考えてみれば狭いコミュニティだよな・・・。
「どうしたの」
と問うと、「回覧板」と亮が2,3枚のホッチキス留めしてあるプリントを差し出した。
ぱらぱらと目を通す。町内会会合のお知らせ。ペットマナーについてのお知らせ。町内清掃のお知らせ。
「今月お前んち当番やぞ清掃。来週の日曜」
「うっそ最悪・・・」
「先月うちやったし」
「どうせあんたはやってないでしょ。おばちゃんが参加したんでしょ」
「用事あってん」
「昼過ぎまで寝てたくせに」
「お前何俺の生活把握しとんねん怖っ。最悪やなこんな隣」
「洗濯物干してたら見えるんだよ!カーテン閉めて寝ろっつの」
「っつーか!俺がなんで亮ちゃんと一緒おんのかとか聞いてや!!」
あぁ、ヒロのこと忘れてた。(うそだけど)
とは言っても、どうせいつもみたく亮の家に遊びにきていただけだというのは予測できるのだけど。
そしてそれを言ってみたところ大正解で、「当てられたらつまらんやん」とヒロはほっぺを膨らませた。しかしすぐに忘れて「今からコンビニ行くんやけども一緒行く?」と笑う。
こういう人間が、自分が死んだことにも気づかない地縛霊になるんだろうな。
「・・・あー、や、行かない」
留守番はいるんだけど。しかも3人。だけどいきなり彼らを残して出かけるのも、なんとなく不安が残る。彼らが空き巣みたいな真似するとは思えないけど。てゆーか、できないだろうけど。
「えーーーなんでやねん一緒行こうやー」
と眉を下げるヒロを無視して、「で、何男連れ込んどんねん。しかも3人も」と亮が不機嫌そうに言った。
ばれてるし。
あ、そうか靴か。
「は?おと、・・・男?」
そう呟いたヒロの顔は、なんというか、・・・なんともいえない表情だった。
「ちょっと待ってや、俺がおるやん、俺、・・・俺という男がおんのになんでそんな、男連れ込んだりとかして・・・・・・・・・」
たぶん、このとき私と亮の心の中は一緒だったと思う。
カウントダウンが始まったな、と。



5,4,3,2,1・・・・・・



「っもーーー嫌や!!!なんっでそんな意地悪なことすんねん!!高校入ってからは俺のこと泊めてくれたことないくせになんでなんでなんで!!!あーーーもう!!!やっぱおんなじ高校行っといたらよかったんやなんであんな頭ええ学校行くねんアホ!のアホ!鬼!いっそドS!!!」
「・・・・・・」
ヒロは普段は能天気でのほほんとしているくせに、何かの拍子ですぐにスイッチが入ってしまう。いわゆる癇癪もち、なのだろう。
しかし今日はドSとまで言われてしまった。
「・・・や、違うよヒロ、今来てるのは従兄弟たちで、・・・従兄弟ってわかるかなヒロ」
「わかるわっ!!!」
「つかお前従兄弟とかおったん?初めて聞いたんやけど」
「だよね・・・」
私だって今日初めて知った。
そのとき、「どーもー」とぺたぺたとリビングから奴らが出てきた。聞いてた・・・っていうより、ヒロの癇癪が聞こえてたんだろう。だからって出てくる必要は皆無で、むしろ出てこないほうが助かるのだけど、奴らが私に有利な状況にことを運んでくれるはずがないのだった。そこはもう、相性の問題。
「・・・・・・の、いとこさんたちですか?」とヒロが尋ねる。亮は、黙って彼らを睨んでる。
「ちゃいます。僕恋人です」
「僕は亭主です」
「え・・・」
「お前もなんか言え、恋人と亭主以外の」
「えー・・・と、あ、じゃあ僕愛人です」
「ふざけんじゃねぇよ!!!!!!!!」
不審者だと言って亮に追い出してもらえばよかった。
心からそう思った。








(06/20)