この町は、二つのチームに分断されている。





パフォーマンスチーム『RED』。
数年前に生まれたこのチームは、歌、ダンス、道化、さらには奇術とあらゆるエンターテイメントを網羅し、日々成長するパフォーマンスで人々を楽しませている。
今やREDのステージは空席がないほどの人気を博し、情報誌に取り上げられることも珍しくない。
異例なほど短期間でパフォーマンス界に名を知らしめた男たち。お上に見捨てられたような小さなスラムでチームを結成。それぞれが優れたビジュアルと個性を持ち合わせており、しかし外見だけに頼る事はなくパフォーマンスの実力もある。そんなチームであるから、話題性は抜群に決まっている。



REDのメンバーはステージによって変化するが、基本的には30人ほどだ。なかなかの大所帯である。
その中でもメインメンバーとなるのは、チーム『RED』を結成した初代メンバーたち。
そんなメインメンバーは5人。



亀梨カズヤ。
田口ジュンノスケ。
田中コウキ。
上田タツヤ。
中丸ユウイチ。



このメインメンバー、しかしかつては6人だった。
その1人は、1年ほど前に突然ステージに上がることを拒否したのだ。
チームの中でも1,2を争う人気ぶりの彼は、『神に選ばれた』と評されるほどの歌声の持ち主だった。彼の実質上の脱退にチームは大打撃を受けたが、他のメンバーたちが懸命に彼の抜けた穴を埋め、今ではまた完璧なステージを日々こなしている。



彼らはこの町のスターだ。彼らの持つ影響力とカリスマ性は、チームカラーの赤色のようにこの町で際立っていた。彼らに憧れる若者達が赤を身に纏うようになって久しい。









そんな彼らと対立しているもう1つのチームが、この町にはある。
チーム名はない。彼らはREDのようなパフォーマンスチームではないのだ。では何をしているチームかといえば、ボクシングだった。
結束力と信頼感、そして一人の男への忠誠において絶対の自信を持つチーム。



その男の名は、渋谷スバル。



彼は公園のストリートファイトからその才能を見出され、プロのボクサーに転向。その後たったの3試合で全日本チャンピオンへの挑戦権を得たという、異例中の異例。特別中の特別。
親の顔も知らずにただ拳を振るうことしかしてこなかった男のシンデレラストーリーは、多くの好意的な反響を呼んだ。
さらに整った顔立ち、ストイックな姿勢、ボクシングへの愛情。いつもクールで物憂げな表情でありながら、情に厚い一面も併せ持っている。彼の名を知らない者は国内ではいないのではないかと言わしめるほどの人気ぶりだった。



しかし、彼は1年前に獲たチャンピオンへの挑戦権をいつまでも持て余したまま、公式戦への登場をぱたりと絶った。



原因はわからなかった。憶測だけがマスメディアを賑わす日々が続く。しかし、世間が躍起になって彼のその後を知ろうとしたのはほんの数ヶ月のことで、その後はまるで何もなかったかのように彼への関心は遠のいていった。
しかしそれでも彼を尊敬し、彼に感謝し、彼を目標とする者たちはいる。その代表でもあり、彼のそばにいることを認められた数少ない男たち。



村上シンゴ。
丸山リュウヘイ。
安田ショウタ。
大倉タダヨシ。



彼らは世間の風潮など関係なくずっと彼のそばをかためていた。そんな集合体であるから、チームと呼ぶには不適切かもしれない。だがその友情、結束・・・それらはどんなチームよりも『チーム』らしかった。
そんな渋谷と彼らもまた、この町の若者たちから憧れられた。彼らは青色を身に纏う。
彼らにチーム名はない。だが人々からはこう呼ばれた。『BLUE』と。



これら2つのチームはほぼ同時期に知名度をあげ勢力を伸ばした為、強いライバル意識が存在している。
本人達はライバル意識のつもりはないのかもしれない。ただ互いが互いを見下しているだけ。一方は相手のことを野蛮と呼び、もう一方は根性なしと呼ぶ。終わりの見えないいがみ合いは狭い町で毎日のように続いている。
アマチュアとはいえボクシングの練習を日々こなす面々が揃う『BLUE』の方が殴り合いの喧嘩に強いのは確かだが、『RED』の中にだって総合格闘技の経験者がいた。あまりメディアやファンには知られていないけれど、亀梨と、田中はそれでも本格的にやっていたほうだった。田口も上田も中丸も、それぞれオリジナルとなるが、これという格闘法はそれなりに持ち合わせていた。そうでなくても渋谷はあまりそういった殴り合いには参加しない。だから格闘要員は『RED』の方が一人多いのだ。そんなわけで、彼らの喧嘩はたいがいが引き分けに終わることが多かった。









もちろん彼らは自分たちのチーム同士が対立しているだけ、という意識なのだが、熱狂しやすい若者たちは勝手に派閥を作る。いわゆる『BLUE派』『RED派』。
この町は今、その2色に染まっている。





しかし、そのどちらにも所属しない者たちも、もちろんいる。
『RED派』、『BLUE派』のどちらにも数で勝る事はないけれど、だけど確実にいる。
派閥を嫌っている人間の集まり。矛盾している気もするが、存在しているのだから仕方ない。
もちろんチーム名なんてないが、ごくまれに『RED』、『BLUE』と並べて『BLACK』と呼ばれる。
なにも黒い服ばかり身につけているというわけではなく、何色にも染まらないという意味合いで。



赤西ジン
錦戸リョウ



彼らがその筆頭に立つ二人だ。
日夜問わず衝突している『RED』と『BLUE』をただ遠巻きに眺める、というのは基本のスタイルだ。
彼らは、『RED』とも『BLUE』とも対立するつもりはない。たまに彼らのいざこざに横槍を入れたり茶化したり、火に油を注いでみたり、するだけで。これら挑発的な言動は、主に赤西による。錦戸はといえば、面倒なのかなんなのか、名指しでもされない限りはほとんど首を突っ込まない。しかし意外と気が短く、主に『RED』から浴びせられる挑発に乗ってしまうことも、ままあるけれど。



ただ、自分たちには関係ない、必要以上にのめりこまない、というスタンスを絶対に崩しはしない。
喧嘩に明け暮れるこの2チームに関わるのが怖いから、というわけではなく。ただ単純に、無駄だと考えるからだ。
そんなことをして何になる?何が変わる?
何にもならない、何も変わらない。得することだって何もない。
そんなことに関わっている時間がもったいないと、二人とも思っている。
しかし、それでも。


現状を高いところから見おろしながら、たまに感じる違和感、何か物足りないような奇妙な感覚があるのも、間違いのない事実なのだけれど、


それが何かなんてわからないのだから、気のせいだと思うこととして。













それが何かわかったら、一体何がどうなるのか。







何かが、どうにかなってしまうくらいなら、わからないほうがいい。









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