何年か前。







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「逃げたい」
「・・・・・・・」
「この世界から、逃げたい」
「・・・・・・どこに?」
「わからん。どこやったら逃げられるかな?」
「ほなその世界っていうくくりはどこまでなん?芸能界、日本、地球」
「・・・・・・」
「・・・わからん?」
「わからん」
「芸能界から逃げるんやったら、明日にでもできるで。辞めますって事務所に言うて、ちゃんとした形で」
「うん」
「日本からやったら、せやな、まずどの国に逃げるか決めなあかんよね。アメリカもええし、オーストラリアとかも安全でええかも。ビザとって、住む家も見つけて、飛行機乗って飛んでったらええ。高飛びやな」
「うん」
「地球からやったら、」
「うん」
「・・・・・・もう、死ぬしかないかな」
「・・・・・・そう思うか?」
「手っ取り早いは手っ取り早いよ」
「・・・・・・せやなぁ」
「でも死んだらあかんけど」
「なんや、言うといてあかんのか」
「あかんわ、そらあかんよ。そんなん許可するわけないやろ」
「許可されんでも死ぬくらいできるで、人間は」
「そう思うなら、あんたこんな話題振らんやろ」
「・・・・・・どうする、この後寝るやんか、んで起きたら俺が死んどったら」
「自殺で?」
「・・・まぁ、そうなるわな」
「・・・・・・・」
「・・・どうする?」
「・・・・・・・あたしが殺したって言うかな」
「・・・お前が?」
「そう」
「なんでや。自殺やぞ、もう、リタイアや」
「諦めたと思わせたくない」
「・・・・・・」
「ヒナとかヨコとかファンの子らに、渋谷すばるが何かを諦めてリタイアしたって、思わせたくないねん」
「どういうことや」
「あんたが諦めたら、あんたのこと好きなひとらも何かを諦める。『すばるですらリタイアしたんやもん、自分がリタイアしたって当たり前や』って思うよ」
「俺にそんな影響力あると思うか」
「思うわ」
「・・・それやったら、自分が殺したって言うん?」
「『渋谷すばるがに強制退場させられた』『すばるは諦めてなかったのに、がそれを勝手に終わらせた』。そう思われたほうが、まだマシや」
「そんなんめっちゃ恨まれんぞお前」
「間違いないわな」
「まず捕まるし」
「当然やね」
「何も知らん連中に好き勝手言われて」
「何も知らんのも当たり前、だって言うてないんやもん」
「それでもお前は」
「あたしが殺しました」
「そう言うんか」
「言うな、たぶん」
「・・・そんなもん、お人好しすぎるやろ」
「そうかな?」
「ただのアホやで、そんなん」
「たしかにアホかも」
「お前への利点一個もないやんか」
「ええよそんなん、損得勘定で一緒おると思わんといて」
「・・・・・・」
「失礼やで、すばる」
「・・・ごめん」
「うん」
「・・・でもお前がそんなんするって言うなら、俺自殺とかできひんやんか」
「できひん?」
「できるわけないやろ」
「だって言うたらもう死んでんねんで、あんたは。そのあとにあたしがどう非難されようとどんな罰受けようとも、直接的な関係はないし、その光景を見ることもないやん」
「見えへんから許されるとか、そんな問題ちゃう」
「・・・じゃあ、死ななええんちゃうかな」
「・・・・・・・そうか」
「簡単な話やろ」
「ほんまやな」
「・・・まぁ、嘘ですけど」
「あ?」
「すばるが自殺したって、あたしそんなんたぶんよぉ言わんけど」
「・・・は?じゃあなんであんなん言うたん」
「死なれたら困るからやん。適当な言い訳つけて、あんたのこと捕まえとかな」
「・・・で、口から出たでまかせか」
「8割でまかせやったわ。残りの2割は思いつき」
「うわこいつ最悪や」
「最悪やけど、ネタばらししたから許してな」
「ばらすなよそういうことは」
「だってすばる嘘嫌いやんか」
「じゃあそもそもそんな嘘つくなよ」
「嘘くらい、つくわ」
「・・・」
「あんた捕まえとくためなら、嘘くらいなんぼでもつくわ」
「・・・・・・・ごめん」
「あたしの世界から逃げんといて。もうすっかりあんたはあたしの世界の住人や」
王国?」
共和国や」
「嘘つけよお前、確実に独裁やろ」
「いやいや、民主主義で」
「協調性ないくせに」
「あんたに言われたくないわ」
「ほんまやで」
「認めるんやん」
「わかっとるもん俺は」
「ほなもっと上手に生きたらええのに」
「・・・・・・でも」
「それは違うと」
「違う、・・・・・・・うん、違うねん。上手に生きたいわけやない」
「・・・なら、今のままでええやん」
「・・・・・・」
「いずれ出会う大事なひととか新しい仲間とか、そういう存在ができたら、自然に変わってくやろ」
「できんのかな」
「できるわそんなん、あっさりできるよ」
「言い切る?」
「言い切る」
「信じる?」
「信じて」
「・・・じゃあそれまでは、どうしたらええと思う?」
「それまでは、あたしがおるから」
「・・・・・・」
「せやから、今のままでええよ。焦らんでええ」
「・・・・・・」
「と、思う」
「・・・思うか」
「思うな」
「思うんや」
「思ってますね」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・もし大事なひととか新しい仲間とかできたら、お前は?」
「うん?」
「 それまでは おるって言うたやん」
「言うたっけ」
「言うたやんけ。・・・俺にそういう存在がもしこの先できたら、お前は俺から離れてくん?」
「・・・すばるがもしも、あたしのこともう要らんって思ったなら、そうかもね」
「・・・そんなん、思うわけないやろ」
「なら大丈夫や。『大事なひとは5人までに留めること』とかそういう決まりなんてないんやからさ、出会いの数に比例して増えてくもんやと思うよ、そういう存在は」
「・・・」
「一人増えたら、一人消す。そんな物の考え方する奴には、大事な存在なんてできひんよ。まぁできるかもわからんけど、その程度やと思う。もっと欲張ったらええやん。5人でも10人でも100人でも、大事な存在って増やせるよ」
「そんなに俺のキャパがあるかどうかが問題やな」
「せやから、いずれ出会う大事なひとのためのキャパが増えてくのが、成長なんちゃうかな」
「・・・・・・」
「なにも、身長だけやないって、成長は」
「・・・コラコラコラコラコラ、俺今一切身長の話題とか言うてないぞ」
「気にしとんのかなって。せやから大丈夫やでって」
「しーてーまーせーんー。そんなもんで慰められたら逆にへこむわアホ」
「そら失礼しました」
「・・・・・・
「なんやねん、身長は分けられへんよ」
「言うかそんなん、お前どんだけぶち壊したいねん」
「あまりにずーっとシリアスは辛いから」
「たまには最後まで真剣でもええやろ」
「そう?ほな、なんですか?」
「・・・改まれると、言いにくい」
「先に改まったの自分やろ。なんやねんな」
「・・・・・・お前は、消えへんから。俺の世界からも逃がさんし」
「・・・・・・あたしの世界からすばるは逃げられへんし、すばるの世界からあたしも逃げられへんねやな」
「そういうことやな」
「・・・なら、もう一緒の世界にしたったらええんちゃう?」
「・・・それは」
「せやろ?」
「・・・そう、か?」
「そうやん」
「・・・・・・そうか」
「うん」
「・・・・・・うん。」













(03/22 枯れたってまた咲くの。)