出会ったときはひたすら無愛想でずーっとムスっとしてて、でもそれはただの人見知りだったみたいでいつの間にかあいつはずーっとヘラヘラしながらわたしの隣にいた。
男女問わず人気者のあいつはそうは見えないけど色々気を張ってるところもあるようで、人気者になんかなったこともないわたしにはわからないその感覚だけどきっと大変なんだろう。



「お前には気ぃ使わなくていーから、すっげぇラク」



そう言ってぐだーっと机の上に倒れこむあいつは相変わらずへらっと笑っている。放課後。午後3時50分。あと10分後にあいつは一人の女の子の気持ちをぶった切りに印刷室へ向かう。



「つーかさ、告白に印刷室ってなんなの?どうしてそうなんの?」
「誰もいないところだからじゃないの?」
「インクくせーよって。なぁ?つかセンセーとか来たらどうする?めちゃくちゃ気まずいんですけど」
「今日は職員会議だから来ないよ」
「へぇーそうなん。あ、だからか」
「だと思うけどね。それくらい女の子は計算するでしょ」
「そーゆーのより俺いっぺん未成年の主張で告白されてみたい。屋上から。ヤラセなしで」
「うわ懐かしー」



カチカチカチ、時計が進む。



「ねぇ、マジ待っててね?」



起き上がったあいつは念を押すように教卓の上に座るわたしを見上げる。子供みたいだと思う。
「・・・待っててもいいけど、」わたしは答える。



「告白断るときに、わたしのこと彼女だとか言うのやめてね」



カチ、



一瞬、秒針が止まった気がした。
あいつは少し黙ったあと器用に眉尻を下げて、「だって」と呟く。



「決まった相手いるなら諦めてくれんじゃんあの子たち、俺のこと」



『あの子たち』と『俺』以外の登場人物のことも考慮しろ。
そう言ったところであいつにはわからないんだろう。基本的に鈍いんだ。何にも気付いちゃいないんだ。そりゃ、気付かせないようにしてるんだけど。





「じゃあ北海道に遠距離恋愛中の彼女がいるとか言っとけば?」
「あー・・・いわゆる・・・白い恋人?」
「・・・だいぶくだらないね今の」
「うっせ」
「ほらもう行っといでよ、4時なっちゃうよ」
「わかったわかった」



あいつはタラタラとドアへ向かって歩き出して、かと思ったらくるっと振り返って「帰んなよ」とわたしを指さした。おざなりに頷くとまたへらっと笑って、今度こそ教室を出て行った。



静かな教室、わたし一人。
教卓からトン、と着地して自分の机に向かう。窓際、前から3番目。



今この瞬間に世界が終わってしまえばいいと思う。
それが無理なら学校が崩壊すればいいと思う。地盤沈下か何か、なんでもいいから。消失しちゃえばいい。
あいつを待ってる時間は、たとえ10分未満でも死にそうに長くて苦しいから。










彼女の事情











ってゆーか、あいつが滅びればいいんだ。










(10/27 あいつって赤西さんです。なんであいつ呼びにしたんだろう。自分が謎。)