あの事務所はまずい。
いや事務所があくどいことしてるとか所属するひとたちがひどいとかじゃなくって。
ならば何がまずいかといえば。



ちゃん、今日アップ一緒やろ?ご飯行かやん?」
「・・・えっと、他に誰かいるんですか?」
「え、いや?二人やけど」



何が、まずいかといえば。



















Dramatic Love Life



















子役から芸能始めて17年。
それなりに名前も世間様に知っていただいて、映画に舞台にドラマCMバラエティ、いろんなステージを踏ませていただくようになりました。
この業界での身の置き方や立ち振る舞いや処世術もわりとわかってます。わかりやすく言えば神助さんやアッコさんやみのさんとはメル友です。ほらわかりやすい。



で、今回。



ドラマのお仕事が決まりました!おめでたい!ありがたい!



『幼い頃から父親の仕事の都合で転勤族だった主人公は、大学に入学し憧れの一人暮らしを開始することに。期待に胸躍らせるが、小学生時代にめちゃくちゃ仲の悪かった男と大学で再会。そこから喧嘩したりしなかったりなんやかんやあったりなかったりする、ありきたりなラブコメディドラマ』です。



主人公、私。
ダブル主演である相手役、大倉忠義くん。
ドラマの顔合わせで初めて会った大倉くんは、背が高くて綺麗な顔で意外と愛想がいいひとでした。



ところで。
大倉くんは、かの有名なジャニーズ事務所に所属するアイドルです。
というわけで、クランクインする前に事務所とマネージャーに口をすっぱくして言われていたことがあります。



『ジャニーズとだけは恋愛するな』



なんで?っていうか、うん、それはわかってる。わかってます。というか予想がつきます。
あそこは大きな事務所だしね・・・。ほらいろいろとあるじゃない・・・怖いものって・・・。



でも友達になる分には何の問題もなくって、というか共演してラブストるのにまったく打ち解けないでいられるはずもなく、クランクインから2週間くらいで私たちは予想以上に仲良くなれました。歳も近いしね。
だけど事務所とマネージャーから言われたあの言葉は絶対に忘れない。
とりあえずこのひとのことは男として見ないようにしておこう・・・といつも念頭に置いた上で私は大倉くんとの距離を順調に縮めていきました。


















でもさ。
友達だけどさ。
お互いそのつもりなんだけどさ。
二人で食事って、どうなの?
友達なら当たり前?
それはそう。それは、そう。
でも向こう、ジャニーズじゃん?



















迷っていたらあっさり本日分の撮影終了、今私たちは大倉くんの知り合いの知り合いがやってるらしいイタリア料理屋さんにいます。
・・・来ちゃったよ・・・。



ちらり、正面にいる大倉くんを伺い見ると、運ばれてきたサラダを二人分に取り分けてくれているところでした。
「あ、ごめん!やるよ私」
「ううん、ええよ。ハイこっち、ちゃんの分」
「あー・・・スイマセン・・・」
気遣いのできる男、大倉くん。女子の面目丸潰れです。



「いただきまーす」
「いただきます」



順番に運ばれてくるパエリアやカルパッチョやパスタを順調にお腹の中に収めながら、いろいろ喋りました。
共演シーンのテンポについてとか、現場の面白いスタッフの話とか、大倉くんのいるグループの話とか、うちのマネージャーがちょっとハゲはじめてきた話とか、もういろいろ。



デザートの桃のコンポートを食べ終わって、大倉くんは「美味しかったやろ?」と微笑んで首をかしげました。


「うん、すっごい美味しかった」
「よかった。なら、また一緒に来ような」
「・・・ねぇ」
「うん?」
「次は、もっと大人数で来よう?大人数ってそんな、10人とかじゃないけど。4,5人とかさ」
私がそう言うと、大倉くんは少し眉間にしわを寄せて俯いてしまいました。
「・・・二人は、あかんかった?」
「いや、ダメとかじゃなくって!ただ、これじゃまるでデートみたい、・・・」
と、言いながらとても恥ずかしくなってきた。なんだ『デートみたい』って!高校生か私!
「デートみたい、って周りに思われちゃう、から・・・」
あー、苦しい。この言い直しは苦しい。


「いや、つかデートのつもりやし、これ」


ほらもー今絶対『この子アホやなー』とか大倉くんに思われて、











・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、











「・・・え?」
・・・デートのつもり、
・・・・・・デートの、つもり?





『ジャニーズとだけは恋愛するな』









『ジャニーズとだけは恋愛するな』











『ジャニーズとだけは恋愛するな』














・・・・・・・・・














よし、わかった。こんなときの対処法はこれしかありません。
「・・・さすが大倉くん、関西人なだけあって冗談上手だねっ」
「・・・・・・」
笑ってくれませんでした。
つか大倉くん、私もさすがにわかってるから。バカなこと言ったってわかってるから。
「スミマセン・・・」
そんな目で見ないでください。
「・・・はーあ・・・まー、ええわ」
そんな露骨に溜め息つかないでください。
ちゃんにそのつもりなかったんならデートやなかったってことやしな」



「そんなこと言わないでください!」



「え」
「え」





・・・・・・え?
私今、何言った?
だってこれじゃ、それこそ、





「じゃあ、デートやったってことでええんや?」






大倉くん、それは悪い男の微笑みです。



・・・・・・あれえええええ?








(08/16  事務所が違うヒロインとドラマ共演設定リクエストです!W&Yなんかの大倉さんと違うのは狙ってる子の前でかっこつけてるからです多少。おまたせしました!)