同じ部屋の同じベッドで同じ時計の同じ秒針の音を聞いているうちに眠りに落ちて。
真夜中、ふわりと目が覚める。
眠りに落ちるまで私を包み込むように回されていたその身体のわりに長い腕はなくなっていた。その代わりのように肩まで丁寧にかけられた布団に包まれてまたたきをすると、ベッドのふちに腰掛ける背中がぼんやりと見えた。寒そうな裸の背中を丸めている章大の周りには暗闇にほんのり溶けそうな白い煙が昇って、鼻の奥に少し染みるような匂いを感じる。



「・・・・・・」



何の脈絡もなく、章大が振り返った。
咄嗟に目を閉じる。



「・・・?」



今度は体ごとこっちを向く気配と、ベッドが少し軋む音。



「起きとるやろ」



「・・・いつから、気付いてた?」



「最初から」



言いながら煙草を枕元の灰皿に押し付けて、にぃっと笑う。そしてその身体のわりに長い腕を伸ばして、私の額に触れる。指から煙草の匂いがした。



「・・・章大、煙草変えた」



「あ、気付くんや」



「匂い違う」



「吸わんのによぉわかるな」



まるで熱でも測るみたいに私の額に添えられたままの手は冷たい。



「どうして変えたの?」



答えない。

章大は冷たいままの手を少しずらして、私の瞼を閉じた。



「・・・前のがよかった?」



また香る煙草の匂い。



あの人と違う 煙草の匂い。











あの日、章大は私を助けてくれた。



煙草をあの人と同じ銘柄に変えて、その匂いをまとって、あの人の思い出で身動きが取れなくなっていた私をふわり、抱きしめてくれた。











「ええよ、戻しても。前の煙草に」



作られた暗闇の中、章大がそんなことを言う。







知らないくせに。



全部、溶けた。



あの瞬間、確かに私はあの煙みたく溶けたんだ。







あの人とは全然違う顔で



あの人とは全然違う笑い方をして



あの人と、同じ香りを身につけた章大に、溶けて。



あの瞬間に、もうあの人の香りなんてどうでもよくなっていた。



あの煙草の香りは、章大のものになっていた。



だから、大丈夫なのに。





「・・・いい、それで」





すっと手が退けられる。最後に香った煙草の香り。まだ閉じたままの瞼にはっきりと浮かぶ、今の章大の表情。



ゆっくり、目を開ける。



想像した表情が正解だったかどうかなんて確かめる暇もなく、唇が重なった。














ふわり る夜。もうあなたのことしか想い出せない。

















(11/06 香想夜の香那さまへ、相互記念のご挨拶!アンニュイ安田さんはむつかしかった・・・こんなんなった。申し訳ないです!これからどうぞよろしくお願いします! )