「・・・え、どゆこと?」
「しょーゆーことっ!」
「うぜぇ」



手に持った醤油さしを叩き落されそうになって、慌ててよける。学食、正面でチキン南蛮丼を食らうのは赤西。



「ちょ、おい!染みつくだろ考えろよお前!!」
「いらねぇんだよそういうの。なにしょーゆーことって。醤油じゃねぇよバカ」
バカにバカと言われた。でも今日の俺は怒らない。なぜなら勝ち組だからです!
餓死しそうになってたの家に大量の食料を持っていき、そこで合鍵と愛鍵を受け取ったのは昨日のことだった。ちなみに本人はまた欠席。食料は昨日の余りがあるから心配なし。無気力の達人の彼女はきっと出歩きもしないだろうと思って、昨日帰るときに俺が鍵を外からかけたから( なんせ合鍵があるんでね!)その点も心配なし。
「やーごめんねぇ赤西くーん。わかってんだ、わかってんだよキミの気持ちは!ちょっといいなって思ってたんだよねんこと!そりゃーわかるよだってだもん、惚れない男なんていないいないいない」
赤西はあからさまに不機嫌そうな顔で「マジでうぜぇ」と呟いた。
俺だってちゃんと覚えてるよ、赤西がのことをわりと気に入って、何度か誘ったってこと。でもってああだから、そういうのはだいたい断るんだ。そこでめげたのが赤西、めげなかったのが俺。言っておくけど俺だってひと月以上は毎日誘って毎日断られ続けるという氷河期を乗り越えてここにいる。・・・ね、完全に俺の勝ちでしょこれは!
「遊ばれてんじゃねぇーの」
負け惜しみが聞こえた。
だけど赤西の声じゃない。顔を上げると赤西の隣の席にトレイを置きながら、「よっす」聖がにぃっと笑った。ちなみにトレイに乗っかっているのはさばの味噌煮定食。
「遊ばれてませーん何言ってんのタバカくん」
「たーなーかーでーすー。だってお前、俺中丸に聞いたけどさぁ、昨日相当買ってったらしいじゃんセブンでちゃんのために」
あのいかにも堅実そうな中丸は、実際口が軽かった。
「だってそれはが腹へったってゆーから」
「いいように使われてるだけなんじゃね?てかお前リアクションでけぇし連れ歩くのにもいいし、ペットにはもってこいって感じじゃん」
「  ペットって、」聖の隣で赤西がくくっと笑った。
「笑ってんじゃねぇよ!つーかー、お前らだってもしからヘルプ求められたら即行行くだろ!」
「俺は行かないね」
今度は俺の隣の席にトレイが置かれた。サラダ、漬物、水。お前は僧侶か。そう思ったのを見透かしたように「あさって試合あんだよ、だから減量中なの」と上田が俺を睨みつけた。
「あぁ、ボクシング?」
「お前それ以上絞る必要なくね?」
聖と赤西の声に「でも増えたら試合もできねぇし。サークル活動っつっても真剣なんだよこっちは」と上田は無表情に答えた。
「なぁんか怖いんですけど目つきがー」
「腹減っててだいぶ気が立ってるよ俺」
「もう喰やいいじゃん、そんくらいなら」
「んなわけいかねぇだろ」
「つかボクサーは試合前は女抱いちゃいけないってあれ、マジな話?」
「・・・うるっせぇなマジだよバーカ!!」
そこでキレんだ。
同じキャンパスにいる彼女に会いにもいけない上田の悲痛な叫びを聞きながら3人でひとしきり笑ったあと、  思い出す。
「ってかなに、なんで行かないとか言うの上田は。さっきの話ね」
そうだよそっちのが大事。上田が構内で偶然彼女を見かけただけでアレがアレしちゃいそうになる話なんかより、よっぽど俺にとって重要な話だ。
「あぁ、その話?・・・だってああいう人ってさ、絶対自分以外にも呼べば来るって男いるはずだもん。俺がわざわざ行かなくてもいいでしょ」
「偏見!偏見!!そんなチャラくねぇよ見てわかんじゃん!!」
「チャラくなくても。勝手に言い寄ってくる男だっていくらでもいるだろ、あの人なら」
そう言いながら赤西をあごで指す。
「  こいつみたいな」
「余計なこと言うんじゃねーよ」
「でもだって、本命は俺よ!?好きって言われたもん昨日!」
「二人っきりの場所でだべ?そんなん誰にでも言ってんのかもしんないじゃん、証人いねぇし」
「・・・っ合鍵だってもらいましたぁー!」
「合鍵って何個でも作れるよな」
「・・・・・・」
「グゥとでも言ってみろよ、勝ち組くん」
「・・・・・・グゥ!」

あーーーーもーーーー超ムカつく!!!なんだこいつら!特に赤西のあの顔!!めげて諦めた奴になんでそんなバカにされなきゃなんねぇんだよマジうざい!!

「・・・わーかった、わかりましたよそんなに言うならこの場でに言ってもらうからね俺のこと好きって!!」
「なに、電話すんの?」
「電話する!」
「男が出たりして」
「んなわけねーだろ!」






1,2,3,4,5,6,7,8コール目、発信音が途絶えた。
『・・・もしもし』
耳に飛び込んできたのは最愛の彼女の声、



ではなく、



『もしもし?』



聞いたことのない、男の声。



「・・・・・・」





反射的に、
電話をきった。
怪訝そうな顔の3人と、一人3秒ずつ目線を合わせて。








席を立って、昨日と同じ道を猛ダッシュ。





















第一目標彼女の家
(なんでだよ、もう泣きそうなんだけど)
(今日はセブンには寄らない!)








(03/17 大学生の会話ってどんなん。)