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錦戸が頭を下げてから、仁はそっとあたしの体を離した。 「じ・・・」 ―――黙って 頭の中に、直接仁の声が流れ込んできた。 ―――本当に、あいつんとこ、行くの 錦戸と一緒に、 ―――お前は、生きたい んだな? 最終確認のような仁の言葉に、あたしははっきりと、頷いた。 今のあたしは、生きたいんだ。 そう、錦戸が教えてくれた。 錦戸と一緒に行きたい。一緒に、生きたい。 この先を、二人の行く先を、一緒に探したい。 だから、 生きたいんだ。 ごめん。 ごめんね、仁。 ―――いーよ 仁は笑った。本当言うと笑えてなんていなかったけど、表情を笑顔にしようとしていた。 馬鹿だな、わかるのに。 水溜り、広がっていってるのに。 今度はあたしから、仁を抱きしめた。 どうしてあたしは仁を選べないんだろう。こんなに強く、あたしのことを想っていてくれるのに。 答えは簡単で、あたしが錦戸を選んだからだ。 錦戸を、好きだからだ。 もうその思いなんて終わったふりをして、忘れたふりをして、自分を騙して。 だけど、気付いたから。 ―――すっげ悔しいけどさ。俺にできなくてあいつにできること、多すぎんだもん。勝てねーよ 仁だって、あたしにいろんなことを教えて、いろんなものをくれた。 仁がいなきゃ、あたしは錦戸への想いも錦戸の想いにも気付かないままだった。 ―――なんだかんだ言ったって、俺、もうあいつのこと信用するしかねーじゃんな だから、ありがとう。 ありがとう、仁。 ―――お前は、 仁はあたしの額にキスをした。 ―――いきな そして優しく、とても綺麗に微笑んだ。 信用するしかないとあたしには言ったのに、錦戸には「信用してない」なんて意地をはって、 仁はいなくなった。 もともといるはずのない存在だったから何も変わらない。あたしたちの生活も、この現実も、何も。 だけど、あたしたちは知っている。 仁がいたこと、仁がくれたもの、全てを、 覚えているではなく、知っているから。 生きて、行くね。 (03/16 こんなのもありです。) |