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携帯電話がけたたましく鳴り出したのは家族全員が寝静まった頃で、特に何をしていたわけでもないけれどぼんやりと起きていたあたしはその画面に表示された名前を見てとても素直に 驚いた。 ―――着信 渋谷すばる 彼はいつもならほぼ間違いなくこの時間は眠っているし、例外的に起きているときは クラブやカラオケで若さを謳歌しているはず。彼自身もそう言っていたのだからそれは確かだ。 それに、出会ってから2,3日後、彼の名前がこの携帯に書き込まれたときに 「俺、電話が嫌いっつーか苦手やから、多分メールばっかになるけど」 携帯同士をくっつけて赤外線通信をしながら、そう言っていた。 実際すばるくんから電話がかかってきたためしは一度だってないし、そう言っていたからあたしも用があってもメールでの伝達しかしたことがない。横山くんいわく、「電話口でのすばるは寝起きレベルに声のトーンが低くて怖い」らしいから尚更だ。 以上のことを踏まえて、電話に出ることには結構な勇気を要した。 通話ボタンを押して、1秒。もしもし、と問いかけるように声を発すれば 『・・・ああ俺や、 俺です』 予想していたほど怖い声ではなかったことに少し安心して、やっと緊張が解ける。 「・・・詐欺師か」 『は? あー悪い悪い・・・あのー渋谷と申しますけどーそちらさんですかねー』 「ハイハイこちらですーどうもこんばんわー」 『あーはいこんばんは・・・って 嘘、俺らってそんなに赤の他人?』 初めて機械越しに聞く声は、確かに日頃よりも低くて聞き取りにくい。だけど今すばるくんは少しだけ笑った。 「いえいえいえ・・・まぁそれはいいけど どしたの、すばるくん」 『寝とった?』 「寝てないよ。寝る体勢にも入ってないから大丈夫」 『あーそう』 「うん」 『・・・・・・』 「・・・・・・?」 すばるくんは黙ってしまった。すばるくんは普通に遊んでいるときも ふ と押し黙ったりするから、その「間」にはもう慣れてしまった。ただ、電話口だと相手の声だけが頼りなので結構困る。 『・・・・・・・・・・・あのー』 「ハイ」 『俺、電話苦手やんか』 「うん、そう言ってたよね」 『・・・・・・』 また黙る。 今の話題に何か意味があったのかもわからないまま、え?とかもしもし?とか言ってもしばらくすばるくんは返事をせず、もしかしたら電波状況が悪いんじゃないかとまで思った頃に、ようやくすばるくんの声が届いた。 『俺お前のこと好きやから付き合ってくれ』 |