雨の日は/村上信五



この時すでに戦争は終わっており彼は再婚してたりするんですが、やっぱり思い出してしまう。特に雨の日は。
彼は3人で生きて行くことを難しいとは思っていたけど、3人で生きて行くことが当然であり、それが願いでした。
彼の中に一番多く残っている彼女の表情はもちろん笑顔で、だけど血に塗れた彼女の泣き顔を生涯忘れることはありません。
あのとき彼女が泣かなければ、彼は彼女と子供と一緒に死んでいました。
だけど、彼女は泣いた。
「生きること」を託された、彼のお話でした。





声/渋谷すばる



前のお話から時間は少し流れ、彼は明日死刑となります。
拷問や暴行を受けて、彼の肺は破れているし骨だって何本折れているかわからない。
このまま放っておいたら死刑にするまでもなく彼は死ぬことになるんですが、それくらいならきちんと終わらせようと。
「抗う」ことをして後悔なんてないと言っておきながら、その実一番大きな後悔をしている、彼のお話でした。






でたらめな子守唄/大倉忠義



なんだかんだ言って彼女に愛情をもっていたのか、と思わせておきながら、実はそんなことはありません。
自分と常に一緒にいた女が死んだことにある程度の感傷はあるけれど、しばらくすればそれも過ぎ去ります。
ただ、彼女に救われたこともある。彼女のおかげで眠ることができた。
それは事実として彼の中にある。
「何もしない」まま、だから、「泣くこともしない」。そのかわり「忘れることもしない」彼のお話でした。





手紙/丸山隆平



この手紙は彼女に届いていません。誰にも届かないまま、燃やされた手紙。
ありったけの愛と思いを詰め込んだ手紙を、彼は死の予感を感じながら書きました。
だけど本当は、これが届かないことだって、予感していた。
帰りたい、帰ると言って何度も言いながら、最後に書いた言葉は後悔です。
だから「果たせなかった」と思っている彼のお話でした。でも、そう思っているのは彼だけなのに。







瞳/安田章大



このまま、死にます。ふたりで。
彼女は壊れてなんかいなかったし、それは彼の願望です。
自分が壊れている自覚があったから。だから、一緒にいる彼女も壊れていなければならない、と無意識にそう決め付けていただけ。
本当は、彼女に恋していただけなのに。本当は一番純粋に想いあっていたのはこの二人です。
だから、このままいけば、また何かを拾うこともできたのに。
それすら気付かず「放棄」し続けてしまった、彼のお話でした。





ずっと二人/横山裕



一番戦争に関係なく自分のことだけを考えているのが彼です。
歪んでるけど、愛情はあります。これだって本当はただの片思いのお話です。
だけど彼女が帰ろうが帰るまいが、全く関係ない。だってどうしたって彼女は彼のものだから。
そのためだけに、戦争すら「利用」した、彼のお話でした。





願い/内博貴



彼女の死に方なんかも明らかにしてみました。
このお話では戦争が終わってから何年か経ってるという状況ですが、彼はずっとずっと彼女のことばかり考えている。
無意識に彼女を傷つけてばかりだった自分を悔やんでばかりの彼です。
狭い世界の全てを「信じ」続けた結果、一番簡単だったはずの願いすら叶えられなかった彼のお話でした。





光/錦戸亮



帰ってきたら彼女が死んでるかもしれない、そんな恐怖をずっと押し隠して、彼は帰ってきました。
予想どおり彼女は泣いていた。だけど、生きていた。だから泣きそうになったけど、自分は泣かないんだという意地でそれすらしまって、彼は彼女に声をかけました。
彼にとって彼女は光で、彼女のいる世界が光。
光のなかに「帰ってきた」彼のお話でした。