布団に寝転がって、天井を眺める。
窓の外から聞こえてくるいろいろな音がうるさくて、だけど窓を閉めるために立ち上がることが面倒で。
は、そんな俺を見て小さく笑って、カラカラと静かに窓を閉めた。
昨日までは、そうだった。












が死んだ。



そう人づてに聞いた。



憲兵に言いがかりをつけられて、反抗したらあっさり銃で撃たれて、死んだ。
まぁ、なくはないわな。
最近の憲兵たちの目に余る横行は知っていたし、はあんな商売柄どうしても見た目が目立つ。それがどうにか重なって、絡まって、その結果がこういうことだろう。









父親の権力のおかげで、戦地に出向く事もなく内勤に立たされることもなく、のうのうと。
毎日生きてるだけの、俺。
どうしようもない道楽息子、堕落した家柄。そんなふうに陰口を叩かれることには慣れたし、そう言われることになんの感情も湧きはしなかった。悲しくもないし、腹が立ちもしない。もちろん愉快な気分にもなりはしない。







そんな俺を、心地いい無関心さで慰めた彼女。







は無邪気であどけなくて、なのに妖艶で、そのくせ驚くほどしなやかでしたたかで、強い女だった。
抱き心地は柔らかくて滑らか。俺の下でがほほを染めて少しずつ顔を歪めていく様を見るのが好きだった。
行為の最中、は必ず涙をこぼす。今更悲しいわけでもあるまいから、きっと癖のようなものだった。
俺はから愛情を感じたことはないし、俺もに愛情を注いだことはない。
それは、当たり前。
俺は金を出してを買って、はそうして稼いだ金で暮らしている。それだけの関係。
にとって俺は客でしかなかった。
そして、俺にとってのは、最低な言い方をすれば、綺麗なおもちゃだった。
ずっと持っていたくて
誰かに見せびらかしたくて
自分の好きなように操りたくて
他の誰も持っていない、俺だけの綺麗なおもちゃ。







まだ、手離したくはなかったけど。




死んでしまったなら、どうしようもない。




またあの娼館にでも行って、同じような女を買ってこよう。
無邪気であどけなくて、なのに妖艶で、そのくせ驚くほどしなやかでしたたかで強くって、抱き心地が柔らかくて滑らかな、美しい女。









「・・・・・・・・・」









そんな女、いるか?
でも、探さないと。




そうしないと、眠れない。
一人じゃ、眠れない。






は俺が一人では眠れないと知って、笑った。冗談と思って笑ったのか、本当だと信じた上で笑ったのかは知らない。
「大きな子供がおったもんやね」
どっちにしろ、そんなふうに笑った。






笑う。






笑う、くせに。








笑うくせに、そばにいやがって。








笑うくせに、知りもしない子守唄をそらんじてみせやがって。

















「・・・・・・眠い・・・」

















まだ払った金の分、遊びきっていないのに、








まだ満足していないのに、








まだ眠れないのに、












勝手に、いなくなりやがって。























「大倉はん」






いつだったか、彼女は行為の最中にこぼれた涙で化粧を滲ませながら、俺に言った。






「あなたも、泣かはったらええのに」
















大きな子供は泣き方を知らない