死に損なった。



情けないとか恥ずかしいとかは思わない。
そもそも死ににいく理由がわからなかった。
なんで俺があんな飛行機に乗って、敵の基地に突っ込んで死ななきゃならないのかなんて、わかるわけない。


だって、それで、誰が守れる?


そんなことで俺の家族を、仲間を、日本を守れるはずがない。





を守れる、はずがない。






俺が死んだら、たとえ戦況がどんなことになっても、が死なない。





それなら、まだ。


まだ、死ねた。


だけど、そんな保障、どこにもない。






死んだら、死ぬだけだ。なら死にたくなんてない。





















出撃直前に終戦の知らせを受けた瞬間、心から安堵した。


死なずに済んだ。


が、死なずに済んだ。


それ以上のことは、何も望んではいなかったから。














小さい頃からずっとそばにいた。


は泣き虫で、怖がりで、寂しがりやで、


こいつを一生守るのが俺の生きる意味だなんて、子供の頃は本気で思っていた。


子供らしい、極端な発想だと今は思う。








なのに不思議と、今もその思いは変わらずにいるんだ。































小さな背中。




「亮兄」




丘の上から、ずいぶん寂しくなった町の景色を見下ろしながら俺を呼ぶの姿を見つけて、思わず足が止まった。



「・・・・・・っ」






涙が溜まる。






が生きていたこと。


その後姿が幻じゃなかったこと。


その全てが、一気に溢れてきて。





会いたかった。


ずっと会いたかった。


出征の前の晩、大丈夫とをなだめていても。


そんなのただの強がりだった。








死ぬのは、怖かった。













「・・・そんなに呼ぶなや。何回返事したらええねん」













だけど俺は泣かない。


一度だって、泣いたことなんてない。


の前では、この先もきっと泣くことはない。






これから先の未来に、涙なんて必要ないから。













振り返ったは、予想通りの顔で泣いていて、








だけど、そんな真っ赤な顔で、














きみは笑った。