明日。
明日、死ぬ。



それはいい。



明日で俺の人生が終わるのなんて、別にいい。



もともと、たいして長くもない人生だったんだろう。
例えばあの日送りつけられた召集令状に素直に従ったとすれば、俺は今頃魚雷と一緒に死んでいる。
で、逆らった、今。
俺は独房の中、さんざん拷問まがいの暴行を受けたぼろぼろの体を起こすこともできないままに、明日の死刑を待っている。
どちらにしても、俺は死ぬ。









そんな状況下、思い出すのは、あいつのことだけだった。











頭がよくて、落ち着いていて、薄っぺらな体をしていて、元教師で、オルガンが弾けて。



傍にいた。



俺の歌が好きだと言っていた。
だけど俺が歌わなくなっても、は傍にいた。



の笑顔が好きだった。
だけどの笑顔が減っていっても、俺は傍にいた。



婚約するとか結婚するとか、そんな予定もなかったし恋人という括りにすら俺たちは入っていなかったけど、いつだって傍にいた。



それだけだった。
俺にはしかいなかった。には俺しかいなかった。
それだけでよかった。













なのに。






俺はあの日を手放し、は明日俺を亡くす。



















嘘のつけない性格だ。


命令されるのも大嫌いだ。


痛いことも、誰かが痛いことも。


泣くことも、誰かが泣くことも。


血を流すことも、誰かが血を流すことも。


全部、大嫌いだ。


だから、戦争なんて大嫌いだ。


だから、戦いになんて行かない。


だから、抗う。


それだけのことを、なぜ許せない。


なぜ全てを統治しようとする。


なぜ統一させようとする。








なぜ、人に







人を








殺させる。


















そんな疑問をぶつけただけで、逮捕され虐待され、さんざいたぶった後に死刑を告げる。













そんな国になんて、生きたくない。




生きてなど、いたくない。




殺してくれるのなら、好都合で上等だ。





俺は曲げない。



俺は負けない。



俺を否定する国家なんか、俺が否定する。



俺は、俺を信じて、死ぬ。



それだけのこと。













巻き添えを食わないようにと強引に追い出した

は今どこで暮らしているのか。



明日、まさか処刑場に来たりはしないだろうな。



絶命の瞬間なんて好きな女に見られたいものじゃない。








好きな女?・・・・・・そう、好きな、女。
























すぅ、と思いきり息を吸い込んだ、つもりだった。



ひゅう、と音が喉から鳴った。



空気がどこか途中で抜けていってしまっているように、肺にはたいした量の酸素が流れ込んでこなかった。



声を出してみた。






声なんて、出なかった。






きしむような息の音だけが漏れる。





もう、歌えないか。
















ごめんな もう歌えないらしい。
















だけど、



俺の歌を好きと言った



俺にとって歌より大事なお前は生き続ける。



俺の歌なんかなくたって、生きていられるから



頑張れよ。



生きろよ。



それだけで、俺に後悔なんて、ないんだから。















でも





声を失くすとわかっていたなら、





愛してるくらい、言ってやればよかった。
















届かなかった、