「死ぬのとか別に恐ないよ。ただ、お前と会われんようになるのだけが、怖い」 一週間前の夜そう言った彼に私は涙をはたはたと落として、彼は泣きそうだったけれど綺麗に笑って私を抱きしめた。 あなたは今頃、空を飛んでいるのでしょうか? 特攻部隊として、終わりのない空旅へと離陸しているのでしょうか? 私の作ったお守りは、まだその首に掛かっているのでしょうか? ねぇ、あなたはまだ、生きているのでしょうか? 戦争は終わった。 だけどそれから3ヶ月経っても半年経っても、彼が帰ってくることはなかった。 空軍本部に問い合わせたって、何百人といた特攻隊員の生死はまだ確認できていないらしく、電話はにべもなく切られた。 私たちの住んでいた町は何度か空襲にあったけれどなんとか全滅は免れて、終戦後は闇市場などが栄えて治安は悪いながらもそこそこ復旧してきているのだと思う。 もし私がここにいなくなったら、彼の帰ってくる場所がなくなってしまう。そう考えて私はしぶとくこの町に暮らしていた。 だけど、もう帰ってこないのではないだろうか、と、いつも心の隅で考えていた。 それはとんでもない恐怖で、いつも蓋をして見ないふりをしていたけれど、たまにその蓋が不意に外れてしまうときもある。 最後の別れをした小高い丘の上、あの夜と、見える景色は全くちがうけれど。 「・・・亮兄、」 「亮兄、 亮兄・・・りょ、」 呟けば、溢れ出てきた寂しさと涙はとめどなく。 「そんなに呼ぶなや。何回返事したらええねん」 後ろから聞こえた、聞き覚えのある苦笑交じりの声。 息が止まった。 信じられなかった。 振り返るのが恐かった。これで振り返って、誰もいなかったら。幻聴を聞いてしまうくらい、彼を求めているのだと実感するのが恐かった。 「あとお前な、いつまでその呼び方やねん。俺お前の兄貴ちゃうやんか、なぁ?」 「オイ、聞いとんのか?こっち向けや、独り言を俺に言わすな」 「」 胸の前で手をギュ、と握り締めて 勇気、勇気、勇気、と3回呟いてから、振り返った。 もったいないね、涙であなたが見えないよ |