サイレンが鳴り響く。見慣れた景色が炎に包まれている。空が、赤い。 ヒュルルルル、落下音とともに降ってきた爆弾が、私たちを隠してくれていた建物に直撃した。 爆風に飛ばされ、傾いている電信柱に思い切り背中をぶつけた。衝撃に息が止まる。 「っ大丈夫か!?」 同じように吹き飛ばされた彼は、だけどすぐに起き上がって私に駆け寄ってくれた。かすむ視界の中で、彼の右脚が真っ赤に染まっているのが見えた。 「、信五 さん、足が、」 「こんなんどうでもええわ!」 「よくないですよ 」 「そんなことよりお前のが大事やろ!」 違う、 違うんです、信五さん。 ぐらり、揺れたのは視界でも地面でもなく、私が背を預けていた電信柱だ。 私にとっては あなたが何より大事なんです。 力を振り絞って、彼の体を思いきり突き飛ばす。足を怪我しているその体は、予想よりもあっさりとバランスを崩した。 ズシン、次の瞬間に電信柱は地面との間に私を挟んで、倒れた。 「っ!!!」 またもすぐに起き上がって私の名前を叫んで、彼は炎に炙られて熱くなった電信柱をどうにか私の体の上からどかそうと力を込める。 「 信五さん、」 「頑張れ、すぐどかしたるから!」 「逃げてください」 「もうちょっと我慢せぇよ!大丈夫やから絶対」 「、いいから逃げて!!もう間に合いません!!!」 「・・・ 、」 「 ごめんなさい 信五さん、 今 」 「赤ちゃんが、死んでしまいました」 私のお腹の中にいた、彼との初めての赤ちゃん。最近はお腹を蹴るようにさえなって、それに触れては私たち夫婦は笑いあっていた、けれど。 わかるよ、お母さんだもの。 生んで あげられなかったね 、ごめんね。 「私ももう、 もうすぐ、」 「言うな」 信五さん、あなたにだってわかるでしょう?私の体を貫通する尖った木柱の破片、その目で見えているはずで。私の口から流れる血にも、気付かないはずがない。 「 だから、逃げてください」 「、嫌や」 「結婚、してからも私 何も信五さんの、役に立 てなくて、できていない妻だったと 思います」 子供を殺してしまってごめんなさい。 あなたを幸せにしてあげられなくて、ごめんなさい。 私にできたことなんて、いつでもあなたの隣で能天気に笑っていることくらいしかなかった。 あなたが私にくれたものの100分の1も、私はあなたに与えられなかった。 「でもね、 」 こんなだめな妻でも、 あなたを愛する気持ちは 誰にも負けない。 だから望むのです。 「 生きてほしい んです」 わがままを言う私を、 好きだ と言ってくれたあなただから |