「俺、何してんねやろな・・・」
布団の上で彼が呟く。まだ日は高く、眠るにはあまりに早い。だけど大きな体を布団に伸ばし、天井を見つめて言う彼の目は今にも眠りそうに瞬きを繰り返していた。
私はさっさと起き上がって、床に落ちた服を拾い上げる。
「大倉はん、少し、眠っていかはったら?」
「んー・・・」
少し遠い、サイレンの音が聞こえ始めた。
「・・・避難、せなあかんかなぁ」
「隣町のサイレンですやろ。お外もにぎやかやし、心配ないと思いますえ」
「ふーん・・・ ほんなら、こっち来て」
手を優しく掴んで導くように引っ張られれば私に断る理由などなく、できる限り衝撃を殺して彼の体の上に倒れこんだ。
「、大倉はん」
「ええやん、ちゃんと金持っとるもん」
「・・・眠たいのんと違いましたの?」
「寝たくないねん」
私の裸の肌の上をするすると滑る彼の手。誰も殺していない手。武器を握った事もない手。この時世に珍しいほどに綺麗な手。
「 大倉はん、私、大倉はんの手ぇがとても好きやよ」
「手ーだけ?」
「お顔も背中も話し声も、お金をぎょうさん持ってはるところも」
「ふふ、」
小さく笑って、私の髪を掴む。ぐい、と引っ張られて何本か髪が抜けるのがわかった。



「親の金のおかげで戦地に行かんで済んどんねん。情けない男やね」



自嘲。そんな、笑い。



「・・・行かんでええやないの」
「そー思う?」
「大倉はんが行かはってもうたら、私、生きていかれへん」
「・・・そらそうやろな。こんなにアホみたいに金落として行くん、俺くらいのもんやろ」
くるり、視界が入れかわる。真上にある彼の顔はどこか悲しそうに見えた。気のせいだと思うけれど。



「あんたが好きやから言うてますの」



「・・・・・・ふーん、嬉しい」



興味なさ気に言って、髪に口づけを落とす。いつもの始まりの合図だ。




、」


「こんなふうやなくて、お前の一生買いたい 言うたら、  いくら?」







求める振りなんてしないでちょうだい