「・・・・・・・・・・・さっみ」



の部屋の玄関の外にしゃがみこんで、2時間が経つ。西日に照らされても芯から冷えた体はそう簡単に温まってはくれない。



さすがに、きつい。



『関係ない』
『頼んでない』



花束を抱いたまままっすぐ俺の目を見て言ったの言葉が刺さって、痛む。
たしかに、関係はないんだろう。がこんなに落ち込んだ理由は俺じゃない。俺はをそこまで傷つけるような、そんなこと絶対しない。
頼まれてもいない。仁が俺に連絡をよこして俺はここまで来たわけだけど、からは何も言われてはいないわけだし。そもそもは、だから俺や亮ちゃんに何も言わずに見過ごしてくれるであろう仁を選んだんだろう。仁が俺に連絡したことがの計算違いだっただけ。



だけど、



『要らない』
『帰って』
『一人がいい』



そんな言葉をの口から聞きたくなかった。それを聞いたその瞬間に、このまま世界が終わればいいとすら思った。にそんな言葉を言わせるような世界ならなくなってしまえばいい。を、あの優しくてさびしがりな弱い彼女をそこまで追い詰めたのは、何だ。
もしその原因がわかったら、俺がそんなもの全部ぶっ壊すのに。そのために何かが必要であるなら、何だって差し出す。何を引き換えにしてでもいい、の闇を消し去ることができるなら。



そう、思うのに。



「・・・・・・・く・・・っそ・・・」



悔しかったんだよ。
俺との間に強引に線を引いたに何もできずに、ただ部屋を出てしまったことが。



花束を抱いて泣くを無理矢理にでも抱きしめればよかったんだ。線なんて飛び越えて、嫌だと言われてもあんな細い腕くらい押さえつけて。どんなに痛がったって離さずに、絶望するくらいに俺たちは二人だってことを教えればよかった。



だけど結局俺にはそんな度胸がなくて、手のひらに爪の跡が残るほどにぎゅっと拳を握り締めて、に背を向けた。ただでさえ何かに傷ついているをさらに傷つけることなんて、できやしなかった。



どうすればいい?



は優しくてさびしがりな、弱い子だから。これまでだって何度か落ち込んだり弱ったりふさぎ込んだりする姿を見てきた。そのたびに俺は、一人きりで泣こうとするを放っておけなくて、無理にそばにいて、強引に引っ張り上げては一人じゃないんだってことをしつこいくらいに言い聞かせてきた。



だけど、違ったかな。
俺が今までやってきたこと、間違ってたかな。
『一人がいい』なんて、そんなさびしい言葉を言わせるほど、俺がを追い詰めてたのかな?



もうわかんないよ、どうすればいいのかなんて。








(01/23 おもたい。)