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背後で玄関の扉が閉まる音が聞こえた。



こうしようと思っていたわけじゃない。だけど扉を開けたの子供みたいに不安そうな顔を見たら堪えきれなくなって、抱きしめてしまった。
俺の腕の中にがいる。愛しくて仕方がなかった。たった数時間扉一枚挟んでいただけなのに、ひどく懐かしい気がした。
「・・・・・・・痛い?」
そう尋ねると、は小さな声で「ちょっとだけ」と答えた。少し腕の力を緩めると、も俺の腕の中で少し力を抜いたのがわかった。
「・・・ごめん、帰らなかった」
「・・・・・・」
「ダメだった。なんでもが望むままにしてあげたいっていっつも思ってんのに、帰ろうなんて一瞬も思えなくって」
「・・・・・・」
「・・・・・・傷つけたくないから、ずっと大事にしてきてさ。何にも無理強いしなかった。泣いちゃうと思ってね、俺は泣いてる見たくないし」
「・・・・・・・」



だからいつも隙を見つけるみたいにしてに触れていた。眠っている間、酔っ払っているとき、適当な理由付けをして手を握ったりするだけ。それで十分だった。



「だけど俺も普通の男だから、そうやってそっとしておいてもいつかが俺のこと好きって、・・・友達としてじゃなく男として好きだって言ってくれる日が来てほしいって思ってる。俺がいっつものことばっか考えてるみたいにさ、も俺のことずっと考えててほしいって思う。それが思いあうってことじゃん」
「・・・・・・」
「・・・思いあいたいよ、と。男としてじゃなくたっていいから、仲間としてでも構わないから、それでもちゃんと、思いあいたい」
「・・・・・・」
「関係ないかもしれない。頼まれてもない。要らないのかもしれない。だけど帰れなかった。一人がいいなんて、いってほしくない。だってそんなはずないもん。は、一人がいいなんて思う子じゃないって俺は知ってる」
「・・・・・・ごめん、あたしひどいこといっぱい言うた」
「うん、傷ついた」
「寒かったやろ」
「手の感覚なくなるくらいね」
「・・・・・ごめん」
「いいんだよ、全然。・・・・・・でも、教えてほしい。・・・俺が出てって、一人になれた?」
「・・・ううん。自分が追い出したくせに、ずっと外に山ピーおるのが心配で」
「・・・・・・」
「外寒いし、風邪引いたらどうしようって」
「・・・・・・」
「なんか、自分が落ち込んだ理由とか暗い気分なんかより、そっちのがよっぽど気になって」
「・・・・・・」
「でも自分からはドア開けられなくて」
「・・・・・・」
「だから山ピーがもっかいチャイム鳴らしてくれたとき、どうしようって思ったけど、なんかすごい、安心した」
「・・・嫌じゃなかった?」
「・・・嫌やなかった」
「よかった・・・」
「・・・・・たぶん、やけど・・・山ピーが表おってあたしが家ん中おったあの2時間の間」
「うん?」



「さっき山ピーが言っとった、『思いあう』って形になっとったんやと思う」



そのの言葉を聞いた瞬間、嬉しくて、そのくせ妙に胸が苦しくて、言葉が出なかった。
これまで何度ものことが好きだと伝えて態度でも表してきたけど、どこか、見ないふりをされているような気がしていた。それがの望む「今のまま」の関係を続けるためには必要だっていうことはわかっていた。それでもやっぱり少し不安だった。

だけど、届いてたんだ、ちゃんと。

「やっぱり男としてっていうより仲間としてっていうほうが大きいけど、・・・それでもちゃんと、思いあえとったと思うから、」

はそこで一旦言葉を切った。
今まで腕の中で力なく降ろしていたその両腕を俺の背中に回して、ぎゅっと力を込める。



「・・・ありがとう」



そう言って、すぐに手を離して俺の腕からするりと抜け出した。
「・・・・・・」
「ごめん、今めっちゃ恥ずかしかったわ」
照れたようにそう笑うの顔を見て、


意識が飛んだ。









(01/22 気絶です。)