最近はライブのリハなんかが重なっとるし、まぁ今んとこ喉の調子は上々やけど、それに油断して本番でつぶしたら洒落にならんわ。というわけで俺はかかりつけの病院の待合室に座っとる、わけやけど。 「しぶやさん、1番の診療室にお入りください」 「しぶやさん、いらっしゃいませんか?」 「しぶやさーん」 診療室のドア越しに繰り返し聞こえる声が呼ぶのは、絶対俺やねん。絶対。 でも返事をするのがなんかもー、とんでもなく癪やねん。 そもそもかかりつけの、訪れたのは5回目くらいのこの病院でなんで今更俺は名前を間違えられとんのか。 とはいえこのまま無視を決め込んだらもう二度と俺の順番は回ってこないわけで。いつまでもこの茶色いソファに座っとくだけの時間の余裕もないわけで。 渋々腰を上げて、何番やっけ、1番?と診療室のドアを開ける。 俺しぶや違いますけど。開けるなりそう言ってやろうと身構えていた俺に「あ、しぶやさんですか?」と追い討ちをかけるように言ったのは、 「・・・看護婦さん」 「はい?」 100%が俺の好みで構成されたような、麗しの看護婦さん。 「今日は検査でよろしいですか?」 「・・・あ、はい」 あぁタイミング逃した俺もう今日しぶやさんで通すしかないやんか。 「じゃあ先生の前のイスにどうぞ」 仕方ないから指し示されるままに丸イスに座ると、ようやく何度か見た先生の顔。看護婦さんは静かに診療室から出て行った。あーあ。 「ライブが近いんで喉のメンテナンスをしたいと思いましてー」と先生に説明する、あぁなるほどなるほどと頷く先生。・・・・・・つーか先生は俺の名前ちゃんと知っとんねやから言えよ。俺しぶやさんになってもうたやんけ。 喉薬を処方してもらって、診療室を出る。 もう一度同じ茶色いソファに座って5分もすると、 「しぶやさん、お会計の準備ができましたので受付カウンターにどうぞ」 小走りでカウンターに向かう。あの看護婦さんがカウンターの向こうにいた。 「本日のお会計は2900円になりますねー」 と微笑む。財布をごそごそとまさぐっていると、 「しぶたにさん、」 彼女の声が、 「・・・え?」 「他の患者さんが騒ぐとご迷惑になるかと思ったので、しぶやさんって呼んだんですが・・・勝手に、すみませんでした」 「・・・・・・」 「あ、こちらが喉のお薬の処方箋になりますので、」 |
処方箋なんていらないから、 入院していいですか。 |
恋の病とか、ないですか。だめですか。あ、だめですか。 |