ごめんね。



そう何度も言って、電話の向こうで彼女は泣いた。
雨が降る夜、電話ボックスの中。外には誰も出歩いていなかった。
この世界に俺は、一人ぼっち。そんな錯覚を覚えた。



ちゃんと愛した。
その優しさも、わがままも、瞳も唇も爪も声も、全てを余すところなく愛した。



だけど、たぶん、愛しすぎてしまって。



愛情の重みは、彼女を押し潰す一歩手前のところまで積もっていたらしい。
愛しくて愛しくて愛しくて、強く抱きしめたら、彼女の呼吸が苦しくなった。そんな感じ、らしくて。



愛してるんだよ。



だから、彼女を何よりも優先しなくちゃいけなくて、
彼女が苦しいと言うのなら、俺は彼女を解放してあげなきゃならない。
そうだろう?
そうだよ。
それくらいわかれよ。
彼女が泣いてるのは誰のせい?
俺だろうが。
わかってんだろうが、それくらい。



だけど、胸が痛いんだよ。
喉の奥が、炎を丸呑みしたみたいに熱いんだよ。
体半分を引き千切られたようで、耐えられないんだよ。



なぁ、考え直して。
ごめんなんて言うな。
俺を、消さないでよ。



みっともなく俺がそんなふうに言えば言うほど、だけどお前は泣くんだ。



傍にいてあげられなくてごめんね。
願いをかなえてあげられなくてごめんね。
いつまでもあなたの世界に住んでいてあげることができなくて、ごめんなさい。



そんなふうに謝るくらいだったら、傍にいろよ。俺の願いをかなえてくれよ。いつまでも俺の世界で、俺と二人で、幸せに暮らそう。笑顔も、泣いた顔も、全部見せてくれ。俺も見せるから。全部話して、全部聴く。怒りがあるなら、苦しみがあるなら、全部引き受ける。俺が全部受け止めて、打ち消す。
眼鏡の奥で、涙がこぼれた。それが嫌で。もうこれ以上言葉が出ない。それを認めたくなくて。このままでいたい。何も変えてしまいたくない。



だけど雨は、雪に変わって。









受話器を置いた。





用意していたんだ。
買うのが恥ずかしいだとか今更要らないだろうとか、口ではいろいろ言ってたけど、本当はお前へのプレゼントなんてとっくに用意してたんだよ。
たいしたものじゃないけど、きっと大事にしてくれる。そう、当たり前のように思ってさ。似合わないラッピングまでしてもらったその小さな箱を、胸に大事に抱えて。



だけどもう渡せない。もうこの電話は、二度とお前に繋がらない。





電話ボックスを出る。無神経に降る雪。
好きだったのに。



見上げた夜空、高すぎてつかめないよ。



届くのに。
手を伸ばせば、届いたのに。今までずっと、手を伸ばせばそこにあって。これからだって、あって。そこに、俺はいて。ずっと一緒で。
なのに俺は落ちていく。どこまでも、落ちていく。どこまで落ちたって、お前はいない。この伸ばした手は、空もつかめないし、お前の腕をつかむこともできなかった。




届くのに、



なぜ?






White X'mas






二度と戻らないStory